懺 悔 記

虎になりたくない、三十路目前女子のブログ。

マッチングアプリ退会のご報告

暑い。暑すぎる。やっと梅雨が明けたと思ったら、酷暑である。
最近の天気は、加減というものを知らない。

 

突然だが、昨日マッチングアプリを退会した。

利用報告もしないうちの、突然の退会報告。お許しいただきたい。


さて、話は、2週間前にさかのぼる。


とら子が住んでいるシェアハウスは、木造一戸建てで、 現在6名の住人が暮らしている。
玄関から一つ扉を隔てて、 24畳の広さを誇るLDKがあるのだが、 ここで平日の夜や休日の朝など、 偶然居合わせたメンバーで歓談することがある。
ある日の夜半、とら子はリビングで小桑さんと居合わせた。
梅雨明け前のその日も、雨は降り続いており、 日照時間が少なかった。
要するに、二人とも情緒不安定だった。


本の話、転職の話、恋愛の話、これからの話・・・
内容についてはおぼろげな記憶しか残っていないが、 2時間近く話を続けていたような気がする。
0時を回ったころ、良い具合に眠くなり、各々「じゃ、また」 と居室に引き上げていった。
そして翌朝、ふっと思い出したのが、「私、 過去には後悔してないんよ」という小桑さんの一言だった。


愛に生きる小桑さんは、強い結婚願望がありながらも、 現在フリーだ。
しかし、今に至るまで、お見合いからコンパから、 運命の人と出会う努力をたくさんしてきたという。
「その時その時、一生懸命動いてたからね。だから、 後悔はしてないんよ。」
「多分、過去に戻れても同じことすると思う。」
「でもね、とらちゃん。未来は選べるんよ!」
夜中の妙なテンションと、情緒不安定が相まって、 小桑さんは名言を連発した。


とら子は思った。深い、と。


そしてさらに思った。「私もどげんかせんといかん。」


しばし思案したのち、 とりあえずマッチングアプリに登録してみようという結論となった 。
実はとら子、 以前もマッチングアプリに登録していたことはあるのだが、 折しも離婚直後の精神不安定期であった。
マッチング後、出会いに漕ぎつけはしたが、 その不安定ぶりを如何なく発揮し、 お互い気まずくなってフェードアウトするという経験がある。
でも今の、小桑さんの言葉に感化されたとら子なら、 出会いに前向きになれるかもしれないよね!


新型コロナの蔓延状況も不安なため、 三密になりそうな街コン系のイベントは避けたい。
お見合いはなんかちょっとハードル高いし、 そもそも仲人がいない。
結婚相談所は、行くこと自体が大きな傷になりそうなので、 時期尚早であると判断する。


マッチングアプリの利用は、消去法で考えた結果、 辿りつくべきして辿りついた結論であった。


さて、世の中には多様なマッチングアプリが存在している。 よく電車等の広告で見かける「Pairs」を筆頭に、「 Omiai」「タップル誕生」といったサービスがあるという。
いずれも男女の出会いを目的とし、写真やプロフィールを見て、 まずは気になる異性に「いいね」で好意を表明する。 相手がそれに応じることで、マッチング成立となり、 メッセージのやり取りが可能となる。
以前、Pairsに登録したことがあったので、 今回はメンタリストDaiGoが監修・プロデュースしている「 With」なるものに登録してみることとした。
「With」のウリは、心理学に基づいた性格診断を参考に、自分と相性の良い相手を探せることだ。
これだけ聞くと、なんだかすごい感じがするが、 使用されている性格分析の指標はBIG5だそうだ。 とら子は性格特性論があまり好きではない。
性格分類には2通りあって、 以下のような違いがある。
①特性論:ある性格特性をどの程度持っているかという組み合わせで、人の性格をとらえようとする
②類型論:人のタイプをいくつかに分類し、 その人がどのタイプに当てはまるか見定める


特性論は、人を観察・評価するものさし(BIG5だと「 外向性」「情緒安定性」「勤勉性」「協調性」「開放性」) を示してくれるところは価値があると思う。
表面的な自己理解・他者理解は進むかもしれない。初対面の相手の傾向をとりあえず知るにはちょうど良い。だが、薄っぺらな感じがする。「うん、まぁ、当たってるけど、 知ってた」てなもんである。


この漠然とした印象を振り払うため、 先ほど簡易診断を受けてみたが、 感想は特に変わらずだった。

なお、「情緒安定性」 が著しく低いという結果が出たことも、あわせて報告しておく。


さて、中途半端な知識で、BIG5への不信感を述べたが、 結局とら子は「心理学に基づいているなら、なんか良さそう」と、 大衆と全く同じ感想をもってして「With」に入会したのであった。


「With」では、いろいろな心理?テストを受けることができる。 そのテストを受けると、 コミュニケーションの取り方や、 恋人との関わり方の傾向が診断され、 結果がプロフィールに掲載される。 診断結果を参考にしながら、異性との相性の良し悪しを検討することができるといった寸法だ。
確かに心理タイプを知ることは、 相性をはかるある程度の参考にはなるかもしれないが、 そもそも興味関心に違いがあると、会話が始まらない。
しかし、「With」には先述の欠点をカバーするための、 カード選択システムがある。
例えば「犬が好き」「旅行が好き」や「 医療関係の仕事をしてます」「黒髪が好き/自分が黒髪」など、 自身の趣味や属性を選ぶことで、興味関心を表明できるのだ。
とら子は迷わず「ぽっちゃり好き/自分がぽっちゃり」 を選択した。


およそ2週間程度、「With」のお世話になった。 診断を受けたり、 カードを選んだりすることは楽しかった。
謎のプライドから、自分からいいねは一切押さなかった。 こういうところが、マジ山月記


そんな山月記女でも、マッチングすることはする。
しかし、3往復くらいのやりとりで違和感を覚えはじめ、 5往復するころには返信する気をなくす。果たして、 フェードアウトである。マッチングアプリでの出会いに、 全く乗り気でない自分に気づく。
そのうち、「いいね」 を処理するためだけにアプリを起動するようになり、 それすらめんどくさくなって、「私のことを知らぬくせに何が「 いいね」だ!」と理不尽な怒りを覚えるまで、 さほど時間はかからなかった。 絶望的にアプリに向かない人種なのであった。

 

唯一ライン交換まで行ったのは、僧侶だった。とある宗派の総本山に勤めているということで、にわかに色めき立ったとら子だったが、おそらく彼は病んでいた。実家を継がねばならないプレッシャーに押し潰されていたようだった。

やりとりを進めるうちに、病んでる人独特の執心を文面から感じとり、久々に背筋が粟立つ恐怖を覚えたため、丁重にお断り申し上げた。

彼の尊厳のために詳細は記さない。

御仏様の救いがあることを祈念する。

 

元来、面と向かって断ることに慣れていないとら子である。この一件で全精力を使い果たした。

きちんと断るという機会を与えてくれた僧侶に感謝をしながら、とら子は静かにアプリを退会した。